あたたかくてやさしくて…たとえていうなら光のような。

――――夢を、みた。2年前の…兄と慕った人の夢を。
『いつかお前にも見つかるさ。大切な――――守りたいやつが』
2年前も、彼――――フィンはデューイにそう言った。
姉ではなく、一生をかけて守りたい誰かが見つかるのだと…。

…目が覚めたら、不意にある少女の姿が浮かんで。
――――なぜだか急に、会いたくなった。

デューイは少女の住む酒場へ歩いていた。
あたりは暗く、夜が明けるにはまだ早い。
(起きているわけがないのに)
騎士団を辞めたデューイを心配してか、毎朝一番に声をかけてくれる少女。
あと何時間かすれば、きっと彼女はデューイに会いに来るだろう。
(…それでも)
待っていられなくて。
(どうして…)
こんなにも。
(…会いたい…)
会いたくてたまらない。

あたりは先程よりも明るくなって――――夜明けまでは、もうすぐ。
デューイは酒場の前に来た。
だが、時間が時間なだけに彼の他には誰もいない。
――――いや、いた。
「…デューイ?」
(――――え?)
上から降る、声。
見上げれば、屋根の上に桃色の髪の少女――――エルファの姿がある。
「エルファさん…」
エルファは『浮遊』を使って、デューイの前にふわり、と降り立った。
「…やっぱり、デューイだった」
そう言って微笑む彼女は、とても綺麗で。
やっと、自分の気持ちがわかったように思う。
…フィンの言葉がよみがえる。
……いつのまにか、夜が明けていた。

「…ずいぶん早いね?」
「ええ。…目が覚めてしまったので。エルファさんは、何をしていたんですか?」
「私も、目が覚めたから。ちょっと屋根に登って景色を見てたんだ。普段はなかなかできないしね」
「くす、……エルファさんは本当に朝からお元気ですね」
「……それ、ほめてんの…?」
「――――私は、そういう女性は好きですよ?」
(…あなたが好きです)

たとえていうなら光のような。…誰よりも大切なヒト。

「…冒険に行くなら、ぜひお誘いください」
(私は…あなたを守りたい)

――――とてもとても愛しい人。
(あなただけの騎士に…)

もちろん、と微笑む少女の手に、デューイはそっとくちづけた。
少女を守ることを誓って。