「この前の新しい冒険者。たしか、

アリスとか言ったっけ。あいつやなやつだよな。」

ガチャン!!

コップの割れる音の後に酒場のカウンターに座っていたアルターは立ち上がり、

男の座っているテーブルの前にきました。

アルターはその男を軽くにらみながら酒場を出ました。

アリスは何も悪い事はしていませんでした。

ただ単に、その男のお酒を注いだ時に、

少しこぼしてしまってふきんを取ってくる間に男が怒って

出て行ってしまっただけなのです。

『あいつは悪くない。』

朝いつもアルターに挨拶をして行く時のアリスの表情が浮かんできました。

「アルターおはよう!」

みじかい挨拶ですが、アルターにとっては十分でした。

『気休めに今日、剣の稽古にでも誘おう』

そう思っていると、さっき出てきた酒場から、アリスが出てきました。

「よう!今日剣の稽古に行こうと思ってるんだけどお前も行くか?」

「行っていいの?」

「もちろん!」

少し考えているのか、5秒ほど時間を置いて

「じゃあ行く!」

と元気のいい返事をしました。

「さっそく裏山行こうぜ!」



裏山についたアリスとアルターは、さっそく剣の練習を始めました。

アリスは強く、アルターはビックリしましたが、

アリスもアルターの剣さばきにビックリしていました。

「アルター、少し休まない?」

「おう!そうするか!」

アルターはアリスに聞いてみたい事がありました。

どこからコロナの町にやってきて誰に剣の技を習ったのかです。

でもなぜか聞いてはいけない気がして言いかけたりしましたが、結局言えなかったのです。

「なあ、1つ聞いていいか?」

「・・・なあに?」

「お前どこから来たんだ?」

アリスははっとしてうつむき、何か迷っていましたが、少しして口を開きました。

「聞いてくれる?」

「?あぁ、もちろん。」

アリスは今までの事を少しずつですが話し始めました。

昔かえるだった事。ラドゥに出会って、人間にしてもらえた事。

呪いがかかっている事。

「それでね、一年の間に、呪いを解かなきゃならないの。」

「俺が絶対呪いを解いてやる!だから安心しろよ!」

アリスはにこっとして、「ありがとう」と返事をして、

「じゃあ、私と練習試合をしてほしいの。」

「絶対勝つぞ!」

「私だって負けないわよ。」



結果はアルターの2勝一敗でした。

「お前なかなか強いな!」

アルターは女には一度も負けたことはなかったのです。いえ、男でさえも。

「アルターもなんでそんなに強いの?」

考えた事もない質問でした。

「鍛え方が違うから・・・かもな。」

「暗くなってきちゃったね。」

「そうだなそろそろ帰るか!」



「じゃあな!一敗したのが気にくわないがまた練習しようぜ!」

「じゃあまたね!」

空にはもう一番星が光っていました。