夏祭り



コロナの町が、だんだんと騒がしくなってきます。
夏祭りが、近いせいです。
準備に、打ち合わせに、参加するだけの人は、その時に着る『浴衣』を見立てるのに。
コロナの町は、大忙しでした。

「シルフィ♪」
「ルー、どうしたの?」

シルフィ=ジェイラス、魔法戦士。
竜の呪いを解くために、賢者ラドゥの魔法で人間になっています。

「夏祭り、近いじゃない?…そういえばシルフィは何かやるの?」
「…なつまつり?」
シルフィは、首をかしげました。
「うん、夏祭り。」
「………って、なに?」
ルーは一瞬驚いたような顔をして、直ぐににっこりと笑いました。
「そういえば最近、依頼で居なかったね、シルフィ。えーっとね、夏祭りって言うのはー…」
そんな二人の光景を見ながら、アルターがくすくす笑っています。
「アルター…何か可笑しい?」
シルフィが、怪訝そうな顔をしてアルターを見ます。
「や、そうしてると、姉妹か何かみたいだなって。」
「…老けてるって言いたいワケ?アルター…」
機嫌の悪そうな声を出したのは、ルー。
「どーせあたしが姉なんでしょ?…同い年くらいなのにね、シルフィと私。」
「違う違う、シルフィが小っちゃく見えるんだって。」
アルターが、カウンターの近くから、酒場のテーブルの方に歩いてきます。
「本ッ当、背ェ伸びないよな、お前。」
シルフィの頭をぽん、とたたきながら、アルターは笑って言いました。
こうして見ると、アルターの胸くらいまでしか身長がありません。
何度冒険をくり返しても、肌は白く腕は細いままです。
一緒に冒険に言った帰りに、レティルやルーに羨ましがられるくらいに。
「うー、呪いのせいかな、やっぱり…」
シルフィは、あごに指を置いて眉根にしわを寄せました。
アルターは、また吹き出してしまいました。今度は、ルーも一緒に。
「な、何?!」
「ごめんごめん、でもさ、マーロにそっくりなんだもん」
「はへ?」
「マーロもさ、悩む時そうするじゃん。」
言われてみれば、そんな気もします。一緒に冒険をするうちに、クセが伝染ったのでしょうか。
「ところで、何か用が有ったんじゃないのか?ルー。」
アルターに言われて、ルーは頭を掻きました。
「あ!忘れてた。夏祭り近いから、浴衣選ぶの誘おうと思って。」
「ユカタ?」
「夏に着る東洋の民族衣装よ。洋服。んじゃ、行こう。」
「え?え?ええ???」

…その十数分後には、シルフィはルーの着せ替え人形と化していました。
「シルフィ、なんでも似合うー。じゃあ、次はコレ着てみてー。」
「う、うん…」
ルーに言われるままに、様々な浴衣をとっかえひっかえしてみるのですが、ルーの言葉を借りれば
『絶対コレ!ってカンジのが無い』らしいのです。
「んー、どれにしよっかァ…」
ルーが悩んでいると、後ろからマーロが来るのが見えました。
「マーロ。良いところに来たね。」
「な、なんだよ」
やけに猫なで声のルーに、いつもとは違う何かを感じたようです。
「シルフィの浴衣選び、手伝って。」
「わ!ちょっと!やめろ!俺を女物の店に連れ込むなってこら!」
昔、母に連れて行かれた婦人服の売り場で、店員にスカートをあてがわれた苦い思い出が甦りました。
「マ、マーロ!?どうしたの?!」
「どーしたもこーしたも引きずられて来たんだけど」
不機嫌そうな顔で、マーロは腰をおろしました。
「シルフィの浴衣選び手伝ってもらおうと思って。」
「……別に良いけど」
まんざらでも無さそうな、しかし小さな声で、マーロは呟きました。
「何か言った?」
「…別に。」
「んじゃ、早く良さそうなの選んで頂戴。」
「はいはい…」
…シルフィは、彼が好きです。
永遠に言えないだろうと分かっていても、彼が好きです。
マーロも、同じような気持ち、同じような状態でした。
そんな二人を見て、ルーは少し歯痒く思いました。
「…コレとかは?」
マーロは仏頂面のままで、浴衣を差し出しました。それはシルフィの髪と似た色をしていました。
「あー!良いじゃんソレ!シルフィ、着てみて!」
「う、うん。」
マーロは、正直な所を言うとピンク色の物をかたっぱしから差し出していたので、少し驚きました。
「こ、これで良いのかなあ…?」
それは、シルフィにとてもよく似合いました。
「やーるじゃん、マーロ。シルフィ、これにしよう!」
「に、似合うかなあ?」
「すごい良く似合ってるよ!ねえ、マーロ!」
「え、あ、ああ、うん。」
「ね!マーロもこう言ってるんだし。」
「じゃあ、これに…しよっかな」
彼が『似合う』と言ってくれたから。
それだけで、シルフィはそれを買う気になりました。
お互いに顔を赤くしている二人を見て、ルーはふっと笑いました。
…やっぱ、なんだかんだ言って相思相愛ってカンジじゃない。
夏祭りは、すぐそこまで迫ってきています。

「シルフィー!」
朝起きると、アルターが声をかけてきました。
「あ、アルター。おはよう。」
「夏祭りさ、一緒に行かねェ?」
「あ、うん…いいよ?」
マーロと行こうかな、と思っていた矢先だったけれど、そう言われては断れませんでした。
「夜からだよな?夕メシ食ったらすぐ行こうぜ。」
「う…うん。」
マーロも誘って良い?と聞こうとした途端、アルターはどこかへ行ってしまいました。
「アルター!待って!」
慌てて酒場から出ても、既にアルターの姿はどこにもありませんでした。
「…ま、いっか…マーロも来る…よね、夏祭り。」
とりあえずその場は楽観的に考える事にして、シルフィは遅い朝食を摂りに行きました。

「あ、アルター!来た来た!」
少し時間に遅れてきたアルターに、シルフィは思いっきり手をふりました。
「シ…シルフィ?そのカッコ…」
「ああ、コレ?マーロのお見立てなの。…変?」
「いや、全然!良く…似合うよ。」
「よかったぁ…」
確かに、よく似合っています。浴衣は、彼女の髪の色を鮮やかにしたようなピンクに、赤で鞠の模様が
入っているもので、いつもはおろしている髪を後ろの方でまとめて、仕上げにかんざしを挿していました。
「それじゃ、行こうぜ。」
シルフィの手を引いて、アルターはどこかに行こうとします。
アルター、マーロが何処にいるか、知らないかな…
そんな事を聞くのも野暮に思えて、思わず手を取られるままに人混みの中に紛れてしまいます。
「…良いの?マーロ。」
「…うるさい」
ルーとマーロが、その光景を見ていた事に、シルフィは気付きませんでした。

「アルター、それ何?」
「ん?ワタアメ。食ってみる?」
「うん♪」
見るもの全てが新鮮で、シルフィは他の事をすっかり忘れていました。
「ほら。」
と言って、アルターはシルフィの肩に手をまわして、綿飴をシルフィの口元に持って行きました。
「…甘い…」
アルターは自分のした事に赤くなっているのに、シルフィは何食わぬ顔で綿飴と格闘していました。
これがマーロだったら綿飴どころじゃなくなっちゃうだろうな、と、シルフィは秘かに考えました。

「…すっかり遅くなっちまったな…そろそろ帰るか。」
「うん、そうだね。」
二人が歩き出した途端。
ひゅううっ、と音を立てて、花火が上がりました。
「わぁ…!」
シルフィは空を見上げて、目を見開きました。
「ね!ね!すごいね!アルター、これ、何?何て言うの?」
花火に見蕩れるシルフィと、そのシルフィに見蕩れるアルター。
それは傍目に見て、恋人同士のようでした。
意を決して、アルターがシルフィに心の内を話そうとした時。
「あ!マーロ!ルー!」
隠れ潜んでいた(つもりの)二人を、シルフィが発見してしまいました。
「ねえねえ!おいでよ!すっごく綺麗だよ!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ…」
あきらめて出てきた二人と、脱力感が体を蝕んでいるアルター、相変わらず花火に夢中のシルフィ。
その花火も終わり、帰り道で。
「マーロ、夏祭りの間…どこにいたの?」
「え、いや、その…」
まさかシルフィを付け回していた、とは言えず。
「私、ずっと探してたのに…」
少しふてくされて、上目遣いにマーロを見つめる。
その表情が可愛くて。
シルフィの額に、唇を、寄せて。

「…マーロ?!」
「俺さ、シルフィの事好き…みたいなんだけど」
照れたような苦笑を浮かべて、マーロは頭を掻きました。
「本当…?」
「本当。」
「あのね、マーロ、耳貸して?」
シルフィの背に合わせて、マーロはひざを曲げました。
子供っぽくて、たどたどしいキスを頬に受けてから。

その声は小さくて、よく聞き取れなかったけれど。

『大好き』と聞こえたような気が、しました。















♪あとがき♪
アルター、可哀想な役やらしちまって、ゴメン!
ああ、これでも飛川はアルターファンなのですけれども。。。
かえほんやって第一声が『赤い髪の人かっけェ〜!』でしたからね。(ニヤーリ
アッシュさんは飛川の好きな芸能人ベスト3ぐらいにランクインしてるし…
マーロ可愛いし…ラケル可愛いし…レラさんはお姉様とお呼びしたいし…ああ、とにかく
かえほん最高!!!!
飛川にかえほんを貸してくれた某宮口君、サンキューでした。お礼に今度ギャルゲー貸すよ。
それでは、今回はこんな駄文読んで下さってまことに有難うございますた。
かえほんファンが全国1000万人を越える事を願って。
乾杯。        2001.05 飛川和芭

銀河@管理人:
かえほんファン全国1000万人!!!( ̄□ ̄;)
な・・・何て壮大な・・・!!(笑)
いや、でもその位目指さないと駄目ですかね。管理人失格(?
作品提出の際、色々何度もお手数お掛けしてすみませんでした。
でも素敵な作品を作り上げて頂けて管理人は幸せ一杯ですvvv
これからも是非是非かえほん同盟を御贔屓に・・・♪

お疲れ様&有難う御座いました・・・vvv